ランゲルハンス島沖

どうしてそんなこと言うの

速度

 

バンプオブチキンを聴いている。

最近は、「メーデー」のイントロを聴いただけで、涙が出てくるようになってきた。目を閉じると、どこまでも暗く、星々が瞬く銀河が広がる。速度が上がる。目を開けるとわたしは中学校の体育館の前に立っていて、校舎を眺めている。黄ばんだ風景。ださい制服。ぐったりした上履き。ぼうっとしていると、わたしの前を色んな人たちが、時代が、走り抜けていく。友達、好きだった人、先生、部活の先輩や後輩たち。はっと見ると、わたしは制服から剣道着へ着替えている。校庭ではハンドボール部が活動していて、砂埃と松脂の匂いが体育館まで入ってくる。外の水飲み場で涼む後輩。汗で湿っている額。喉の渇き。両手の肉刺。ふと呼ばれると、わたしは家路についている。上履きからスニーカーへ履きかわっている。汗と制汗剤の匂いが体から滲み出る。背負ったエナメルが重くて、右肩がつらい。誰に呼ばれたのかわからない。いつもの交差点。カーブミラーを見ると、誰かが歩いてくる。わたしと同じ音楽を好きだった人。言えなかった言葉。

 

 

バンプオブチキンを聴いたとき、嫌でも、こういうことを回想してしまって、懐かしくて切ない悲しい気持ちになるので、覚悟して聴くようにしている。

子供の頃に聴いていた音楽を大人になって聴くと、ああなんでこんな人間になってしまったんだろう、とか、ここにいて自分は正しいのだろうか?とか、自分の全てが間違っているような気になってくる。子どもの頃は、自分は何にでもなれると確信していたからかもしれない。

自分のことをどう考えようが、日々は続いていくので、とても残酷だ。感傷に浸っている時間はない。そういうことも含めて悲しい。